秋も10月、11月になると、あちらこちらからお囃子の音が聞こえてくる石見神楽の故郷。それが、島根県西部の石見地方です。収穫を祝う秋祭りでは、各神社で夜を徹して神楽が奉納され、お囃子の音に誘われて心を躍らせながら神社に向かい神楽を見るのは、石見の人々にとって大きな楽しみです。最近では、祭りの時期のみならず、一年中神楽を見ることができ、週末ともなると奉納神楽だけでなくイベント・ホール公演が沢山催されるようになりました。
 石見神楽は、古くから伝わる伝統芸能ですが、お年寄りから子どもにまで熱狂的に愛され、親しまれてきた現代に生き生きと息づく郷土の宝ともいえます。また、石見地方には150を超える神楽団体があり、多くの若者がその中心メンバーとして活躍しているという、他の伝統芸能では見られない姿があります。
 石見神楽では、金糸・銀糸の刺繍をほどこした絢爛豪華な衣装に身を包み、時にゆったりと時に激しくダイナミックに奏でられるお囃子に合わせた、重厚感溢れる華麗な舞、天に舞い地を駆け巡る勇壮な舞が見られます。その、エネルギッシュで躍動感あふれる舞や、様々な姿に変化する「八岐大蛇(やまたのおろち)」は、人々の心に驚きと深い感動をもたらすことと思います。
 石見神楽の演目は、古事記・日本書紀に見られる神話や各地の伝説を題材としたもの、史実を創作演目にしたものまで幅広い内容になっており、神や鬼が登場する勧善懲悪の分かりやすいストーリーで展開します。その分かりやすさ故か、石見神楽が舞われているところでは、最前列に陣取り目の前で演じられている舞を見ながら、自分も神になり鬼になって舞っている子ども達の微笑ましい姿が、よく見かけられます。
 まさに、石見神楽は、未来へ脈々と受け継がれる時代を超える伝統芸能であり、石見地方から日本中のイベント会場へ、芸能の世界へ、あるいは世界の舞台へと活躍の場を広げ続けている、郷土の誇りです。
 皆様も、ぜひ東京公演においでいただき、私たちの郷土の誇りである石見神楽の迫力ある舞台をご堪能ください。