石見神楽亀山社中は、島根県西部に伝承される八調子石見神楽を継承し、発足20年になる若い社中ですが、神楽熟練者により結成されています。特に、成長著しい若いメンバーの躍動感あふれる舞は、見どころの一つです。亀山社中は、社中理念である「温故知新」の精神を貫き敬神感をもとに伝統芸能を継承すべく、厳しい練習を重ねています。主な活動は、神社祭礼を中心とし、イベントへの参加も多数あります。また、島根・広島両県の神楽大会にも出演し、高い評価を得ています。
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八調子石見神楽は、浜田の地に誕生し、進取闊達な気風の人々が多い土地柄にも支えられ、熱狂的に愛され育まれて進化を遂げてきました。ダイナミックで速いテンポのお囃子に合わせた躍動感あふれる舞が、八調子神楽の大きな見どころです。しかし、その躍動感あふれる舞は、重厚な舞があればこそ引き立つのです。演目の初めは、腰を低く落とし基本の形をしっかりとおさえた舞。重厚かつ力強い舞に目を奪われながら、石見神楽ならではの動きの美しさを堪能することができます。そして、演目の中盤から後半にかけては、躍動感あふれる華麗な舞が展開されます。思わず身を乗り出し、目の前で繰り広げられる舞を見ていると、お囃子に合わせて自然と体が動き、心も浮き立つのを感じます。これが、亀山社中の舞です。
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石見神楽には、30を超える演目がありますが、それぞれの社中によって保持演目、得意演目があります。亀山社中の場合は、古くから舞われている演目を社中独自のアレンジで筋を再構築した「頼政(よりまさ)」と「貴船(きふね)」です。これら2つの演目から見えてくる世界は独特で、格調の高さ、芸術性さえ感じさせます。特に、「貴船」は、美しい衣装のみならず、舞そのものも優れた表現力に支えられた必見の演目で、終了後も、心に残り続けることと思います。これが、亀山社中が表現する神楽の世界なのです。
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石見神楽の衣装は、金糸銀糸で刺繍された絢爛豪華なもので、浜田の人々によって一針一針心を込めて作られています。また、神楽面や「大蛇」の蛇胴は、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている石州和紙を使って作られており、石見神楽は、浜田の地とは切っても切り離せない関係にあると言えます。神楽衣装は、一着数百万円する物もあり石見神楽には欠かせませんが、ただ高価で絢爛豪華なだけではありません。背景の幕や舞台上の全ての舞手とのバランスが、とても大切なのです。舞手が2人、4人と人数が増えてくると、それぞれの衣装がお互いに引き立つものになる必要があります。舞台を見ると、背景の幕の前に浮き上がるそれぞれの舞手の衣装。誰かの衣装が悪目立ちすることなく、全員の衣装が主張しすぎることもなく、調和のとれた舞台。これが、亀山社中の神楽衣装です。
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